本とともに生きる

加古川読書倶楽部の活動とメンバーによる雑なブログです。

僕らが世界に出る理由(石井光太)

僕らが世界に出る理由 (ちくまプリマ―新書)

僕らが世界に出る理由 (ちくまプリマ―新書)

 

 

ノンフィクション作家・ルポライターの石井光太氏が書いた、今悩んでいる若者に「一歩踏み出そう!」と背中を押してくれそうな本。

とある高校の先生がビブリオバトルで紹介していたのを聞いて読んでみることにしました。

「世界に飛び出すこと」、「学ぶということ」、「メディアとの向き合い方」、「そして支援するということ」、これらについて今まで受けた質問に答えるという形式で書かれています。

著者は小さい時から物書きにになるという志を持ち、大学時代には1日3冊本を読み、週に1冊作品の模写を行い、月に1つ試作を行っていた。
また、大学1年の時に海外に行ってから、誰もが行かないであろうと思われるところや、その地で生活している人と同じような生活をすることで「知る」ことを行い、言葉を通じてそれを伝える活動を今のスタイルにしているそうです。

この本については賛否がはっきりと分かれるのかなと感じました。私の同世代の人の中にはタイトルを見ただけで、拒否反応をする人がいたり、はたまたタイトルを見た瞬間に飛びつく人もいたりと…なんとなく内向きな人にこそ読んでもらいたいんですけどね。

私としては「世界」と「学び」の項目については強い印象を受けましたので、いくつかご紹介します。

・これからのグローバル社会で生きていく上で、海外に行くことはいろんな点で役立つ。そもそも「海外に行くメリットとは何か」というような質問をしている時点で「行く勇気がない」と言ってるのと同じだ。
・今まで自分が抱いていた固定観念を捨ててみる。
・直感を信じる。
・自分で物事を成し遂げるのに楽なことなど何一つない。
・努力は10年続けること。10年続ければ形になるが、2、3年でやめてしまったらそれで終わってしまう。
・勉強をする際にはできるだけ他分野のことも勉強する。

といったところが印象的でした。

(学生時代のゼミの先生は「プロフェッショナルを目指す」ことの大切さを説く一方で、他分野の本を読むことも勧めていましたのを思い出しました。)

今の若い世代の人の中に「メリットは何ですか?」とすぐ聞く人が結構いる気がします。
食事でも出されたものに対して「これを食べることは自分にとってメリットがないので食べません」という人もいました。
メリットメリットってそればっかり追っかけている人に限って、その行為が齎す恩恵を受けることができないんじゃないかと思ったりしてます。(メリットが何かを考えることは悪いことじゃないんだけど、何でもかんでも聞くのはちょっとね…)

ちなみに、後半の「メディア」や「支援」についての項目はあまりピンときませんでした。個人的な好みの問題もありますが、何となく知っている情報が多いし、タイトルの中身を期待した自分にとってはあまり重要ではなかったのでしょう。

石井光太氏の作品は初めてでしたが、トータルでは極めて刺激的で個人的にはよかったとおもいます。どの部分においても「原体験を大事にする」ということが重要で情報を鵜呑みにしない姿勢を持つことが大事かなと感じました。

何より、氏の著作が他にもいくつかあるので読んでみたいです。


【次につながりそうな本】
深夜特急 沢木耕太郎
もの食う人びと 辺見庸
同時代ゲーム 大江健三郎
職業は武装解除 瀬谷ルミ子