本とともに生きる

加古川読書倶楽部の活動とメンバーによる雑なブログです。

人口18万人の街がなぜ美食世界一になれたのか

この本を手に取る人ってどういう人なんでしょ?

高城さんの本が好きな人?

まちづくりに携わっている人?

スペイン料理が好きな人?

 

私は、バスクに興味があったのでこの本を読んでみました。

というのも昨年の夏にクロアチアを旅したときにプリトヴィツェで出会ったスペイン人のカップルと話をした際に、男性の出身がバスクだったとうのが事の発端です。

 

1980年代以降イタリアンが日本でブームになってきたのに対して、ここ数年はスペイン料理、特にバールのようなお店が増えてきて、世間ではスペイン料理ブームがきているように思えます。

そんなスペイン料理の中でもバスク料理は日本では食べることが少ない一方、バスク地方の都市サン・セバスチャンは世界一の美食街といわれているそうです。

しかし、その歴史はここ10年が大きな影響を与えているそうで、90年代から始まった「ヌエバ・コッシーナ」という食の運動によるものだそうです。(そもそもスペインがバスクやカタローニヤといった自治州があったりとするのはフランコ政権の影響もあるそうですがここでは割愛します)

 

既存の伝統的料理である「徒弟制度」「レシピは口外しない」「教えてもらうのではなく盗んで学べ」といったものではなく、新しい技法液体窒素による料理)やレシピを互いに教えあい(エルブリのレシピ公開にはびっくり!)、外国で学んできた手法やレシピを調理法に取り入れ見たこともないような料理を次々と作り上げる、といったことを通じて独自の料理を作り出してきたのが今のバスクだそうです。

ピンチョス、チャコリ、スペインでは珍しいソース文化、豊富な食材、ミニチュア料理などバスクを語るうえで欠かせない料理に纏わるキーワードの紹介もありましたが、バスク文化や政治的背景についても言及しておりかなり読み応えがありました。

 

最終的に著者は、①観光産業は日本にとって今後非常に重要な産業になる②がしかし、日本の観光産業はそのインフラややり方に根本的な問題を抱えている③帯に記されているようにゆるキャラやB級グルメみたいな町おこしでは人は集まっても観光客はこないからサン・セバスチャンのように多面的に食を通じて町をつくることを参考にするべきとの提言もしていて大変参考になりました。

この手の本は批評家ぶって終わってしまうのが多いですが、高城氏は提案をされているあたりでさすがと感じました。その提案があっているか間違っているかはどうであれ、個人的には大変参考になりましたし何より提言をするってのが大事。

 

最後に印象的だったこと

サンセバスチャンの人々はほかの町にはないパッションがあふれているそうです。知識や経験ではなく「想い」なんでしょうね。

私たち日本人にある「想い」、何でしょうね。。。

 

「想い」といえばにわかクラシックファンの私はモーリスラヴェルが大好きなのですが、ラヴェルの母はスペイン系バスク人だったそうです。

特にお気に入りのピアノトリオはバスク民謡を参考にしているそうです。

初めて聞いたときに深い衝撃を感じさせるような感傷的ながらに力強い音楽に強い衝撃を得ました。

第一次世界大戦の際に自ら兵に志願し戦場に出ようとした際に祖国を想う心を描いた音楽、ピアノトリオは各楽章ごとに洗練されたラヴェルの想いがつまった傑作です。


Maurice Ravel - Piano Trio (1914) [1/2] - YouTube

 

話は戻りますが、巻末にはおすすめのお店やコンクールなどイベントの紹介もあり、観光ガイドとしても十分役立つのではないかと思った一冊です。

スペイン(バスク)は死ぬまでに絶対絶対行ってみたい、そう改めて感じた1冊でした。