本とともに生きる

加古川読書倶楽部の活動とメンバーによる雑なブログです。

江戸百夢

江戸が好きです。
循環型社会、粋の文化、マンガ。

そんな江戸をもっと楽しむにはもってこいの一冊。
法政大の教授である田中優子さんが江戸時代の絵から当時の社会を解釈をしている本です。
江戸時代はまさに中世から近代への移行期。
近代のキーワードは「都市化」であり、人が多く集う場所が都市として成立していったのが江戸なのです。
そのため江戸を図像学する際には、たくさんの人が書かれている作品が多い。
そんな視覚世界は甚だしい矛盾だらけの混合、世界との同時性、興奮と静寂、観察と熱情、次々と連想されるイメージが至る所に張り巡らされており、何事も単品で反存在していませんでした。

江戸ではそんな状態を豊饒を尽くすという言葉で「めでたい」というそうです。そこから「尽くしもの」という言葉が生まれ、次々と新な生命が誕生しています。江戸は集合・密の文化なんだと思います。
「百」がついた絵図もたくさん書かれました。たくさんあるものに一通りの完結をもたらそうとしている「百」という言葉にも江戸の粋さを感じます。

絵画、彫刻、手ぬぐい、お多福、バロックアムステルダム、北京、フェルメール、ストライプ、何でも取り込む江戸の世界を田中氏が華麗に魅せてくれます。

この本を通じて益々江戸が好きになりました。お勧めです。

 

江戸百夢 近世図像学の楽しみ (ちくま文庫)

江戸百夢 近世図像学の楽しみ (ちくま文庫)